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「回復」とは何か:依存の症状だけに注目するのではない支援 2025.05.27

こんにちは。職員のTです。

ライフでは「依存症からの回復支援」を施設の目的としています。

では「回復」とは何でしょうか。利用者様がどのような状態になれば「回復した」と判断していいのでしょうか。

私自身、上記の問いを考えながら働いていますし、それぞれの職員や利用者様によって答えが変わってくると思います。

今回は私個人が思う「回復」について書かせていただきます。

回復とは「人間性の幅を広げる」こと

「回復」とは何か。依存対象をやめれば、それで回復したことになるのでしょうか。

もちろん「やめる」ことは必要だし大切なことですが、それがイコール「回復」ではないと私は考えます。

私が考える回復は、一言で書けば「人間性の幅を広げる」ことです。

人は生きていく中で、日々色々なことを経験し、様々な人と出会い、何かを感じ、学び、成長していきます。

その繰り返しの中で「自分は何者なのか」「何に喜びを感じ、どんなことが大事だと考えるのか」「それをどう表現すればいいのか」ということを、意識的にせよ無意識的にせよ試行(思考)しています。

私が言う「人間性」とは、こうした人生の試行錯誤の中で培っていく、その人の価値観や美意識や行動様式であり、それらを多く獲得していくことを「人間性の幅を広げること」と表現しました。

例えば趣味は1つだけよりも2つ、3つとある方が楽しいことが増えるし、色々な人と出会える可能性も広がります。

或いは1つの趣味だとしても、それをとことんまで突き詰めていけば他の人には味わえない楽しさや知見を得られるでしょう。

そしてどのような趣味であっても、それらは社会と繋がっているので、趣味を真剣に楽しむことは社会に対する眼差しを持つことにもなるのです。

これが、例えば楽しみが「お酒しかない」「ギャンブルしかない」となると、人間性の幅が極めて狭いということになります。

これらの依存対象を単に「やめる」だけでは、その人の人生が楽しいもの・幸せなものになるとは、私は考えにくいのです。

ただ我慢するだけの人生は辛いし、それだといずれ再発してしまうだろうと思います。

そのため支援にあたっては、お酒やギャンブルなど依存対象に関することだけに注目するのではなく、その人が本当に楽しめるものは何か、大事にしたい価値観は何なのか、ということを意識するよう促していくことが肝要だと考えます。

そのために普段のミーティングや12ステップの他、映画鑑賞や音楽鑑賞、外出や運動、書道など、様々な体験をプログラムに取り入れていきたいと考えています。

利用者の皆様がライフでの活動を通して、自分ができることの可能性を広げるきっかけを掴んでいただけたらいいなと思っています。