家族のこと 2023.08.08
フィールに通所させていただきそろそろ4か月になります。
前に通所していたところが閉まることになり、そこで始めていた断酒を続けるためお世話になっています。
断酒期間は通算10か月となりました。
しらふになってすぐは離脱症状による心身の変調に振り回され、自分のことで手いっぱいでしたが、最近ようやく周りにも目が向くようになりました。
それにより、お酒を飲んでいた20年のあいだに、私が母にどれだけの苦労を強いたのか、今やっと、考えることが出来ています。
母は、急性アルコール中毒で私が搬送されるたび、病院で先生に頭を下げていました。
家事は全部一人でやり、私の部屋の床に酒の空容器が散らかるたび、無言で片づけていました。
「飲んでないよ」という私に裏切られるたび、肩を落としていました。
かたわら、脳梗塞から寝たきりになった要介護5の父の在宅介護をこなしていました。
訪問介護の助けを受けていましたが、それを差し引いても大変な努力が必要だったと、後になり理解しました。
かけら程度の手伝いしかできない私の前で、疲れを口にすることも、弱音を吐くこともありませんでした。
母を私のアルコール依存の被害者にしてしまったことを、私は償いきれるのか、後悔しかありません。
ついに断酒開始にこぎつけた1か月後に父が他界しました。しらふで見送ることができたことで、飲まないという覚悟がより強くなりました。何もできなかった娘だから、せめてこれからがんばるしかありません。毎日寝る前、今日も飲まなかったと遺影に報告しています。
母に、この病気についての思いを尋ねたところ、
「大変だろうけど、アルコール依存症のこと全部は理解できない。少し様子がおかしく見えると、また飲んだのかもしれないと心配してしまう。」と答えてくれました。
正直な気持ちを話してくれた上、これまでの自分のふるまいを責める言葉は無く、涙が出ました。
母にそれ以上の理解は望みません。今の生活はそもそも「当たり前」なのですから。
ただ、本当に情けないことですが長く断酒を続けていると、ふと、
「励ましてほしい」
「がんばっているとほめてほしい」
と思ってしまう時があるのです。
回復支援施設やAA・断酒会などでは、職員や利用者、チェアマンやメンバーの皆さんが、「当たり前」な話を、うなずきや笑顔を交えて聞いてくれます。時には励ましやねぎらいの言葉まで下さいます。
家庭内では難しいことを、これらの場所がカバーしてくれています。
どれだけの支えになっていることか、伝える言葉が見つかりません。
猛暑の折、夕食時にテレビを点ければ、今が書き入れ時とお酒のCMが次々目に飛び込んできます。
油断すると喉がごくりと鳴りそうになります。
隣に座る母がCMの出演俳優を指差して、
「わたし、この子は絶対に売れると思ってたんや。ずうっと前からやで」と得意気に言いました。
母の笑顔を見ながら一緒にごはんを食べている。
それだけのことが、お酒はどうでもいいや、と思わせてくれます。
そういう一日一日を、これからも積み重ねていきたいと思います。
利用者 アルコール依存症